ヒカリの夜/Made in Takashi Okute
「a room」以来の約2年ぶりとなる、奥手貴士(Made in Takashi Okute)の作品展「ヒカリの夜」です。

まずは宣伝告知用の短編作品「首動」を先立って公開し、前作「a room」とは異なる指向性であることをあらかじめ示唆しています。

明らかに「a room」とは指向性が異なり、奥手貴士の内深くに渦巻く混沌が異なる資質で滲み出ています。今回の作品「ヒカリの夜」に込められた想いは一体どういったものなのでしょうか。奥手貴士は冒頭でこう語っています…。
仮面をかぶった者達、ヒカリは見えるが、すべては闇。
その闇を見抜く事のむずかしさ、答えはどこにかくされているのか。
すべては見えているものが答えではなく、
その内面にある、心の風景に答えを見いだせる。
私が、鏡を見つめていても、
本当の私がなかなか見えてこない。
鏡の前に立ち、目を閉じた時に見える私がある。
それに気付く私と、目を開けた時の私。
今、なにをすべきか、もうわかっていたはずに気付く。
そのような私が私であると理解できる私になる。
あなたにちかづく、
あなたを少し理解できるように、
あなたのことを見られる。
彷徨い続ける混沌の中にも純粋な希望がある。そしてその希望を偽りなく紡ぎだすために、詩の世界観がシンプルかつストレートに響くよう余計なものは排除する方向で作品は構築されています。

ヴィジュアル面では奥手貴士が愛する“絵本”にフィーチャーし、文字と映像をミックスさせた“映画 + 絵本”という独自の世界観を作り上げています。実際の映像に関してはSpread Experimentが全面的にプロデュースし、奥手貴士の指示のもとで撮影と編集が行われています。
まず最初の1ページで「字幕つきの映像」を流し、次のページで字幕として表示されていた文章(詩)を改めて読むことが出来るようになっています。作品はまさに絵本のページを捲るような感覚で1ページづつ読み進むこととなり、前作の「a room」とは180度異なった極めてシンプルなインターフェイスを持つ作品として仕上がっています。

構成としては全5章からなり、各章は映像と文章の2ページで組まれています。最後のページで奥手貴士からのメッセージ(言霊)が表示され、その言葉とともに“裏の世界”へと誘われます。表と裏を表裏一体として表現する手法としてはまさに「a room」譲りであり、過去の作品との繋がりまでもが脳裏を過ります。
裏の世界は“仮面を通したワタシ”という視点で表現され、身に纏った仮面の内と外、外と内がシンクロし始める興味深い世界観になっています。「a room」の“Side B”とは異なり、今作では表も裏も文章(詩)自体はまったく同じものになっているという点も、また見逃せない新たなポイントだと言えます。
(Dir T)
 

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