【異空偶景】/淵田和也
淵田和也の作品展【異空偶景】は、2001年7月10日(水)〜15日(日)に「立体ギャラリー射手座」で行われた同名作品展とリンクし、インターネット上でも同じコンセプトと世界観を持つ新しい形式の作品展として開催されました。現実世界とバーチャルな世界が相互に補完しあい、淵田和也が打ち出す【異空偶景】という一つの表現を形作ります。
まずはFlashムービーによるスプラッシュページで始まり、作品全体としての世界観や雰囲気を閲覧者に伝えます。作品を構成するメインビジュアルは、現実世界の作品展で使用された“ガラス”や“木”といった素材をベースに構成されています。このように細部に共通するオブジェクトを使用する事で、現実世界における作品展との表現差異を埋め、根底部分での繋がりを感じさせるようにしています。

インターフェイスに関しては、必要最低限の操作で作品を閲覧できるようシンプルなものになっているので、基本的には画面下部にある“スイッチ”のオン/オフだけで作品内容を制御出来るようになっています。
現実世界では“闇”を基調としたインスタレーション作品を展開しましたが、インターネット上では“光”を基調とし、「写真+文字」で全編を構成するというまったく異なる表現手法が選択されました。さらに7月の10日〜20日の第一部、7月21日〜30日の第二部、8月1日〜9日の第三部、8月10日〜15日のスペシャルという四部構成になっていて、閲覧する時期によって作品内容が変化します。

作品に使用される写真は淵田和也と森健一(写真家)のものが用いられ、各エピソード毎にカテゴライズされています。写真とともに使用される文字群については淵田和也によって概要がディレクションされ、最終的には奥手貴士(
Made in Takashi Okute)によって全てが生み出されました。
各エピソードのオリジナルプランは淵田和也によって練られますが、映像表現としてコンセプトに沿った内容に仕上げるために、各エピソード毎に異なるディレクターが担当しています(エピソード1ではツチイワフミユキが、エピソード2では橋村進吾が、エピソード3とスペシャルでは淵田和也が、それぞれ担当しています)。

総括すると、作品そのものについての説明や解説は極力排除し、直感的に認識できる“絵”と“文字”から得られる情報だけで、閲覧者は【異空偶景】という淵田和也の紡ぎ出す世界観を感じ取ることになります。この根底は現実世界において開催された【異空偶景】と通じるものがあり、作家とのコミュニケーション面はBBSによる意志交換というもので代替されています。
スケジュールや開催場所の問題もあり、現実世界での【異空偶景】とバーチャルな世界における【異空偶景】を両方体験できるのは限られた一部の人だけになってしまいますが、そういった要素を想定して作品が構成されているので、結果としてもメリットとデメリットをバランスよく内包できているように感じました。また、淵田和也という1人の作家の作品展ながら、実際には適材適所で多くの人達がお互いを支えあって作り上げ、制作面でも新たな方向性を開拓した感が内部にあります。実験的な側面が強いこともあり、反省点や課題点が多く露呈してしまったのもまた事実ですが、これを今後の糧として、よりよい方向に進んでいきたいと思います。
(Dir T)
 

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