鉄男
塚本晋也と田口トモロヲの出世作。体の中から徐々に湧き出てくる“謎の金属”に、肉体だけでなく精神までもが徐々に支配されゆくその情景描写は圧巻。まさに究極のジャパニーズオルタナティブムービーとも言えるブッ飛んだ作品です。
ほとんどセリフがなく、PVライクな映像表現と意味不明な説得力を持った“勢いだけ”トコトンで突き進んでいくのですが、とにもかくにも“やりきっって”ます。悪く言うと単なる自己満足の極み。確かにやりたいことはわかるし、正直羨ましいと思う部分も多々あります。しかし、そんなことよりもとにかく面白くない。映画として本当に面白くない。これは娯楽作品とは言えないので、この映画を観て楽しめるのはごく一部の人だけではないでしょうか? 世界的に評価が高いというのは理解できなくもないのですが、それとこれとは話しは別。面白くないだけならまだなんとかフォローもできますが、ハッキリ言うと意味がわからないのでそれ以前の問題かも知れません。実は観終わった後に映画のあらすじを読んだのですが、その時始めてストーリーがわかったぐらいですし…。
東京フィストではまだ共感できる部分や「ヤルナ!」と思わせる部分もあったのですが、この作品はあまりにもブッ飛びすぎているのでワケがワカりません(※1)。観る前の期待が大きいとその分の落胆も大きく、たまりたまった想いが行き場なく自分の中で膨らんでいくだけという結果に陥る可能性が結構高いのではないでしょうか。
「塚本晋也と田口トモロヲが大好きだ!」という人にはお勧めしますが、ほとんどの場合は進んで観る程の作品でもないのではないでしょう。ただし、その後改めて製作された鉄男2ではかなりの不満点が改善されているので、鉄男2を観る前の予備知識として観るのなら大いにアリだと思います。
(2002/07)